1-68
祠の洞窟で、ルタはジェイスを道案内する。ルタはユシカの様子を気にしていたが、ジェイスに前を向くよう言われる。
小さな墓地さえ避ければ大丈夫だと思って進むが、偶然にもその道がある場所で、ジェイスから墓はどこにあるのかを尋ねられる。ルタはトルニカ島の海洋散骨のことを答えるが、ジェイスは「この島で英雄になったセフィラナの墓はどこにある」と踏み込んで尋ねる。
ルタは頭が真っ白になる。ジェイスの命令でルドヴァイア兵がルタの首元に刃を当てる。ジェイスはユシカを見て「君は墓を知っているか?」と尋ねる。ユシカはルタを守るために墓がある場所を告げた。
ジェイスとルタは小さな墓地への道へ、ルドヴァイア兵らは人質のユシカを抱えて表の道を通って進む。
1-69
ジェイスは岩壁の痕を見て、ここを知っているのはルタとユシカの他に誰がいると尋ねる。ルタはクロウと、おそらくグラリアだと答える。※クロウがクレアに無断で探検したのを申告しているため、グラリアもこの道を使ったのだろうと考える。
しかしルタはグラリアに関して曖昧な回答であり、墓に関しても朧気である。そして、セフィラナという名に関しても……。
ジェイスはルタに、自警団の名の元になった女性だろうと言うと、ルタは「セフィラナ……セフィラナ……セフィル……」とのよう記憶を探すように呟いた。
小さな墓地に着くと、そこには誰もいない。そして、シザール文字で「親愛なる友へ」と書かれた墓石だけがあった。
グラリアがいなかったため、ジェイスはトンネルより先へと行く。ルタにはここで留まるように言った。その墓石にもシザール文字が使われているため、記憶が曖昧だろうと隠し持っていたルタの罪だと言い、そこで大人しくするよう命じる。仮に逃げても、6年前の禁書がルーシェ村にあるからルタが逃げればルーシェ村全員の責任だと言った。
ルタはジェイスに、6年前の禁書とは何かを尋ねる。ジェイスは何も答えなかった。
ルタは墓を見て「誰が手入れしてくれたんだろう」と呟く。小さな墓地の周りの白詰草を摘むと、それを抱えて墓石の前に行こうとするが、ひどい頭痛を訴えて進めなくなる。その瞬間、ルタの後ろにある地面から黄金の光が噴き出すが、ルタは「やめて!これ以上、私の努力も無謀さも奪わないで!」と叫んだ。その瞬間、小さな赤い光が黄金に輝く地面に体当りし、力が溢れ出ないよう押さえつける。
1-70
ルタは白詰草の花束を抱き抱えながら墓石の前に立つ。ルタの景色は一瞬だけ、荒れ果てた土地にある墓に見えた。そして、ルタが抱きかかえる白詰草もやや枯れているように見えた。
ルタは墓石に誰なのかを尋ねる。墓石にシザール語で書かれた「親愛なる友へ」と言う文字を見るだけで、ルタは涙を零す。
「私では……〔親愛なる友(セフィル)〕が望む英雄には……なれないよ……」
ルタの涙が墓石に落ちたとき、墓石に埋め込まれた赤い石が光り輝く。霞んでいたシザール文字が鮮明になった。
【親愛なる友へ】
せっかくふたりになれたんだから、くるしかったことを共有しましょう。
私は貴女を、〔恋人(ジェイス)〕と〔友人(クリスティーナ)〕と再会できるよう紡ぎたかったの。それでも貴女は無茶なことをするんだから……この島で、〔病(実験病)〕に侵されながらも償っていたでしょ?
貴女は身勝手だったから、私も身勝手になってみた。
それって素敵だと思っていたけれども、貴女の言うとおり、駄目なことをしてしまったわ。
ルタは、親愛なる友の言うとおり、苦しかったことを共有する。
「私は! この島で侵した問題と向き合うために、仲間を……〔恋人(ジェイス)〕と〔友人(クリスティーナ)〕を置いて、ここへと来た!」
「私が辿り着く前に、君は島の協力者として活動していた!
罪に問われた私に償うチャンスをくれたのは、見ず知らずの私を親愛なる友と呼んでくれた君のおかげだ!」
「最後の最後で……!
君は私から、積み上げた努力も、愚かしさも、全部奪い去ってしまったんだ!!!」
ルタが苦しかったことを共有したあと、シザール文字はルタの言葉に答え、内容を書き換える。
【見窄らしい親子を愛しんだ
あなたを裏切る友でした】せふぃる。
私は貴女とときのなかで。〔病(???)〕に侵された息子のためだと言い聞かせ、あなたの人生を壊しかけたことは償えたかしら?
息子を守ることで必死だった私は身勝手だったのに、貴女は親身になってくれた。貴女の〔姉(グラヴィス)〕だという人から頼まれた仕送りを、勝手に使っていたのは私よ。
それって最低だと思わない? 両親に見放された貴女の生活や人生を奪おうとした母親失格のおんなでも、貴女がいずれ〔恋人(ジェイス)〕と再会することをずっと願っているわ。
ルタの言葉で、ようやくこの墓石に眠る故人の名は「セフィラナ・エルデンセ」と判明する。彼女こそ本物の英雄であり、ルタの〔親愛なる友(セフィル)〕の正体だった。
ルタは、消されたはずの記憶の一部が蘇る。蘇ったのは、保健室でガルフと話した会話だった。
「ガルフ団長……気持ちは大変嬉しいが、私はまだ希望を失っていないんだ」
「音沙汰は無くなったが、彼はきっと生きている。落ち着いたら、いつかこの島に来ると信じているよ」
そのとき、祠の遺跡の方からグラリアの悲鳴が聞こえた。今のルタなら〔恋人(ジェイス)〕を止めてグラリアを救えるかもしれないと思い、今度こそ本物の英雄になれるかもしれないと思い、トンネルの前に立つ。しかしルタの目の前を、突如現れた赤い衣を纏う女が立ち塞がる。
「易々と最善の道は辿れないものよ」
1-71
赤い衣の女がルタの右手を取ると、ルタは右手の異常に気付いた。ルタの右手が動かないが感触は伝わってくる。しかしその右手はもうルタのものではない感じがした。
赤い衣を纏う女は何かを知るように笑う。
「本来ならあなたもこの右手を使って、あなたの〔恋人(ジェイス)〕と同じように危険な力を描けるのよ」
ルタは急いで身を引いた。利き手の右手を奪われてはろくに戦えないが、それでも左手で短剣を握って構える。
赤い衣を纏う女は、意味深な話をする。
「《封印士(エルデンセ)》と呼ばれる術士はご存知かしら? ……あら、奇遇にも、あちらで埋葬された人の家系のようね」
「〔病(実験病)〕に侵されても無茶をする彼女を救おうとした力が、村の人々や彼女の〔恋人(ジェイス)〕を救出するための最善の道を封じてしまう。それって素敵だと思わない?
……セフィラナ。身勝手なあなたらしい口癖が、こんな場面で役に立つとは思いもしなかった」
赤い衣を纏う女は、ルタに鍵を見せる。この鍵さえあればルタの右手は助かるが、差し出すには条件がある。ルタが道を引き返すことだ。
ルタは赤い衣を纏う女に向かって「この場所に探検に訪れた少女の、右手の自由を奪ったのはお前か」と尋ねる。赤い衣を纏う女は不気味に、楽しそうに笑った。
ルタは条件を呑まず、トンネルを突き進んだ。