1-12 悪夢の中で聞く宝の地図にある言葉
グラリアは幸せそうに眠っていたが、それも束の間のことであり、グラリアの夢の中は鮮明な景色に切り替わる。暖炉に佇む老婆はグラリアに向かって「もう一度だけ、この子の姿を見届けたかった」と言った。夢の中のグラリアは戸惑ったが、老婆は話を続ける。
「私の可愛い孫娘よ。私の声が聞こえるなら、最期に私が言うことを忘れないでほしい」。この時の老婆の言葉には、同時に軋む音(「《オリヴィア》。私の日記の最後のページに、大事な紙を挟んでおいた」という言葉)があった。
老婆は力尽きる前に、シザール語を使ってグラリアに何かを伝える。グラリアではシザール語を理解できなかった。
老婆が亡くなったあと、グラリアの背後から「国民になれる日を待ち焦がれながら衰弱し、いずれは君を置いて亡くなるだろう」という男の声が聞こえる。グラリアに悪寒が走ったが、ベッドから飛び起きると悪夢から目が覚めた。
1-13 クレアからの警告の言葉
目覚めたグラリアは、布団の中に1枚の紙が入っていたことに気付く。その紙は、昨夜グラリアが風呂に入る前に服の中から見つけた紙だった。紙を開いて中を見てみると、そこにはシザール文字が書かれていた。しかしグラリアではシザール文字を読めなかった。物音に気付いたクレアがグラリアがいる部屋を尋ねると、グラリアはシザール文字が書かれた紙を枕の下に隠した。
これからクレアは朝食の準備をするので、グラリアはクレアを手伝うことにした。キッチンに向かうまでの間、グラリアはクレアと雑談する。
クレアは、ユシカ・クロウ・グラリアの3名は昼前にシークスと一緒にセフィル本部に向かう予定だと話した。昼前だとしたら表の11時(地球でいう午前11時)には尋ねに来るだろうとグラリアが言ったあと、なぜ時間のことを表と裏と呼ぶのかを尋ねる。 クレアはグラリアにメモを取らないことを約束させると、薬用植物の研究者の母から聞いた話をする。リ・グラスを含む人の世界の基盤になった世界では、表は午前、裏は午後と呼ばれていたという。表と裏と呼ぶようになったのは、リ・グラスは基盤の世界と違って平面の世界だからだ。
グラリアはいろんなことに興味を持ちそうなので、クレアはまず、リ・グラスを統制したルドヴァイアという国では紙に記してはいけないことがたくさんあると説明する。そのうえで「もし、禁書に触れるようなことを学びたいと思うなら……お国の偉い人になりなさい」 と言った。しかしグラリアにはクレアの言葉が二重に聞こえてしまい、クレアにとって意図しない返事をしてしまう。
クレアから「私の間違いでなければ、あの子は私の父の養子になったのね。でも、どうしてお国の偉い人に?」 と聞いたグラリアは、クレアが表に口にしていないことに対して返答する。クレアは驚くが、うっかり言葉を溢してしまったのだと解釈した。
クレアは庭にある銀杏の木について説明する。黄金になった銀杏は、祝福の木とも呼ばれるという。今は夏なので秋が楽しみだと、ふたりは楽しそうに会話した。
1-14 青い衣を纏う者からの警告の言葉
クレアとグラリアはキッチンに着くと朝食の準備を始める。準備の最中、ふと大きな窓から庭を見たグラリアは、庭に立つ青い衣を纏う者と目が合う。その者は、季節外れの銀杏の葉のような髪を揺らしながら、髪色と同じ黄金の瞳でグラリアを見ていた。
青い衣を纏う者は、グラリアに向かって「君はルドヴァイア国の禁書そのものだ。この後の嵐に身を引き裂かれない為には、君が隠した宝の地図を辿りなさい」 と言った。しかしその裏で「君は生き延びなくてはならない。ルドヴァイア国からの刺客に身を引き裂かれずに済んだだけでも、私は……」と言った。
強い風が吹いてグラリアは腕で目を覆う。再び目を開けると、青い衣を纏う者は消えていた。
1-15 セフィル本部に向かうまでの違和感
ユシカは探険に使った鞄の中身を整理したあと、クルトから借りた筆箱を鞄の中に入れる。ユシカはクルトにもう借りるものはないと伝えると、クルトは落ち着きない様子で部屋に帰ってしまった。
グラリアは、クレアからもらったお下がりに着替える。ユシカとクロウにはお披露目できたが、部屋に帰ったクルトには見せられなかった。
クロウの家まで迎えに来てくれたシークスとセフィル本部に向かうため、ユシカ・クロウ・グラリアはシークス同伴でルーシェ村の中を歩く。その間、ユシカたち3名の子どもはシークスからルーシェ村の話を聞いた。今のルーシェ村はモンスターに作物を食い荒らされることなく農作業できている、ルーシェ村の中だけで得られないものは守護団セフィルに依頼する……といったシークスの話の合間に、ユシカはルーシェ村の祭りの前に荷物を運搬してくれた御者《旅商人》がルーシェ村内にいるかを尋ねる。 シークスは旅商人に何か用があるのかと聞き返すと、ユシカは気まずそうに笑って話を諦めてしまう。ユシカが本当に聞きたいことがどうかはわからないが、シークスはルーシェ村の祭りが中止ではなく延期になったことと、ルーシェ村の祭りのときに来賓客として旅商人を呼ぶからそのときに用件を話せばいいと告げた。
シークスの話にユシカがホッとしていても、クロウには違和感があったため小声でユシカに尋ねる。どうやらユシカは宝の地図が今どこにあるのかを気にしているようだ。クロウは、宝の地図は守護団セフィルに没収されたと答える。
ルーシェ村の広場まで来たとき、グラリアは広場の共用井戸に興味を示す。観光は後回しのため井戸について伺うことはできなかったが、どこからともなく「井戸の水が一番綺麗」と聞こえ、グラリアは井戸の方へと振り返る。井戸の方には誰もいなかった。
1-16 守護団セフィルと国専属の旅商人
セフィル本部の待合室にはすでに団長のガルフがいた。ガルフはユシカたち3名を歓迎し、グラリアとは握手を交わして挨拶する。
ガルフはユシカたち3名をここに招いた本題に入る前に、守護団セフィルに関することを雑談がてら話す。守護団セフィルの旗には、守護団セフィルという組織を示すシンボルがあった。そのシンボルは、ルドヴァイア国を守護する鳥をイメージして作られていた。ルーシェ村と契約を結ぶ旅商人から提案されたものであり、旗の右下には歯車の刻印があった。
旅商人は、商人協会という組織に所属する商人だ。ルドヴァイア国は国民が法律に従って経済を回せるようにするため商人協会と契約を結んでおり、国内では国専属の旅商人が派遣されている。商人協会も国の管理下であり、公務に携わる立場でないので何が禁書で何が禁書でないのかを熟知しているわけではない。そのため、過去には旅商人から提案されて作ったシンボル付きの守護団セフィルの制服を、国が認めず燃やされてしまったことがある。
ルドヴァイア国の法律でいう禁書とは、紙や本に限らないという。国から禁書の所持の罪と見做される前に、禁書となるものは燃やさなければならない。
1-17 グラリアと、ユシカたちのこれからの話
いろいろ話したところで、ガルフは本題に入る。まずはこれからグラリアがどうしていくかについて話を始める。
祠の遺跡の事件の調査をしていた守護団セフィルとしては、事件に関わるグラリアに話を伺いたいところだが、ガルフはグラリアにルーシェ村で健やかに過ごしてもらうことを優先した。今のところ事件の手掛かりは見つからず、調査は一時中止するとのこと。
グラリアがルーシェ村で健やかに過ごすためには、グラリアはルドヴァイア国のルールを学ばなければならない。ガルフはグラリアに文字の読み書きができるかを尋ねると、グラリアは静かにわからないと答える。本当は枕の下に隠した紙について答えようとしたが、青い衣を纏う者からの警告を思い出し、返事を変えた。
グラリアから文字の読み書きができないと確認できたところで、ガルフはユシカたち3名のこれからを話す。ユシカたち3名は明日から学校で特別授業を受けることになった。ガルフからの話は以上だが、話のあとユシカとクロウだけ抜き打ちテストを行なった。抜き打ちテストが終わったあと、ユシカたち3名はシークス同伴でセフィル本部を去る。
1-18 守護団セフィルの秘密裏の調査
セフィル本部からユシカたち3名が去ったあと、ガルフは祠の遺跡の事件と、事件に関わるグラリアのことについて現状を整理する。見たところ、グラリアが所持していたのは水晶のペンダントだけだった。遺品だった錆びた鍵も気になるが、それより問題視していたのは宝の地図だ。シザール文字が書かれた宝の地図は、グラリアが遺体安置所から消えたときから見つかっていない。
祠の遺跡の調査についても、ユシカたち3名に明かしていないことがある。報告のため調査から戻ったセフィル団員から祠の遺跡で見つけた謎の死体について話があったため、ガルフは祠の遺跡の方で遺体を燃やして海洋散骨するよう命じた。
セフィル団員が去ったあとのガルフは、旅商人からルーシェ村は禁書の所持を疑われていることについて考える。シザール文字が書かれた宝の地図が禁書であってほしいが、宝の地図とともに燃やされなかったグラリアのことが気がかりだった。