第1幕その2

目次

1-7 周りの人から見たユシカの様子

ルタはユシカがいるクロウの家までやって来たが、先に到着していたシークスからこれまでの経緯を聞き、ユシカは疲れて眠ったことを知る。ユシカの右手が気掛かりなのでクロウやクレアからも話を聞くと、ユシカの右手には何らかの異常があるのは確かだが、物理的なものによる怪我ではなさそうだった。

他の情報として、シークス曰くユシカに水晶のペンダントと錆びた鍵について尋ねると、他の質問に比べて鈍い反応を見せたという。

胸騒ぎがするルタは、シークスに頼んで遺体安置所まで案内してもらえないかを頼む。シークスはガルフに同意を取った上でなら遺体安置所まで案内できると言い、ルタとともにクロウの家を離れる。

シークスとルタが去ったあと、クロウにも疲れが表れたため、クロウは休むことにした。

1-8 少女の遺体と遺品

セフィル本部に着いたシークスは、まずは連れてきたルタを待合室で待機させる。次にガルフがいる遺体安置所まで向かうと、ガルフは少女の遺体の前で立っていた。

シークスはガルフに、ルタが遺体安置所に入室する許可を出してほしいと頼むが、ガルフは断った。ルタはガルフの妻と仲がよかったため、ガルフとしては妻の遺体を連想させる遺体安置所にルタを招きたくないという。

シークスは少女の遺品について尋ねようとしたところ、ガルフの手にある紙が気になったので先に紙について尋ねる。その紙はユシカたちから没収した宝の地図だが、結局のところガルフにはシザール文字が見えなかった。没収したのは、宝の地図の他にもあった。ユシカたちが祠の洞窟で拾ってから探険でずっと使っている焚き火道具の石だが、この石の正体はわかっていない。

シークスはガルフに少女の遺品について尋ねたところ、今はガルフの事務室の保管庫にしまっているという。シークスは遺品を借りたいと言ったがガルフには遺品を借りる目的がわからなかったため、ルタを含めて会議することにした。

会議までもう少し遺体安置所に留まることにしたガルフは、シークスが去ったあと、亡き少女の手の上に白紙の宝の地図を置く。白紙の宝の地図には歯車の刻印がなかったが、白紙の宝の地図を用意した誰かは、宝の地図が禁書と見做されてしまう可能性があっても少女を見つけてほしかったのだろうと解釈する。ガルフは「禁書とともに燃やされようと、私は君を忘れない」 と告げて、遺体安置所を去った。

ガルフが去ったあと、誰もいないはずの暗闇から、あるはずのない声が響く。

1-9 ユシカと少女の出逢い

ユシカが眠る部屋に、何者かが忍び込む。何者かの左手には錆びた鍵があった。何者かは威圧的な態度で語りかけ、眠るユシカの前に立つ。何者かが身に付ける水晶のペンダントは光りだし、力を解き放つ。光が収まると、何者かは別人になった雰囲気で、ユシカを起こさないように布団を捲ってユシカの右手を晒す。ユシカの右手に錆びた鍵を置くと、続けて何者かの左手を添え置いたが、そのとき意識がぐらついて緩やかに倒れ込んでしまう。

しばらくしてユシカが目覚めると、ユシカの右手は見知らぬ少女の左手を握り返しているのを目撃する。右手が元に戻ったことに驚いていると、見知らぬ少女も目を覚ます。

ユシカは見知らぬ少女に名前を尋ねた。すると少女は何も答えず、唇を震わせる。そのとき、家を尋ねに来たシークスが、ユシカがいる部屋まで向かってくる気配を感じた。ユシカは少女を右手で引っ張り、守るように抱き締めると「何かあったら、アタシがすぐに駆けつけるから」 と告げた。

1-10 記憶喪失の少女

亡くなった少女は忽然と遺体安置所から消えた。ガルフの事務室の保管庫にあった遺品まで無くなっていた。守護団セフィルの団員たちは少女と遺品の捜索を始めたが、夜になっても手がかりはなく、捜索は翌日に再開することになった。少女と遺品の件について、ガルフはシークスにユシカが関与していないかを今日中に確認するよう命じた。

ガルフの命令に従ったシークスは、ユシカがいるクロウの家まで向かうが、ユシカの部屋には亡くなったはずの少女がいた。遺品を持ち出した犯人は少女だった。

シークスは少女を保護しようとするが、ユシカは駄目だと少女を守る。シークスはベッドの前で膝を付き、ユシカから話し出すのを待っていた。シークスの接し方は、身元のわからないユシカが7歳の頃に浜辺で倒れていたところを救助したときと同じで、シークスにとって今のユシカは当時のユシカと似ていた。

ユシカはシークスに、少女は当時のユシカと同じで記憶喪失だと答えた。シークスは少女に「ここは安全な場所だから、今晩はゆっくり休むといい」とだけ伝える。

シークスは立ち去る前に、ユシカの右手は元に戻ったのかを尋ねる。本人から右手が元に戻ったことを確認すると、明日また尋ねると言ってユシカの部屋を去る。部屋の外で様子を伺っていたクロウは、ユシカの右手についてシークスにもう一度確認し、シークスの回答を聞いて安心する。

ユシカはシークスが居なくなる前に、少女を連れて自宅に帰りたいからシークスに同行してほしいと頼む。ユシカとクロウはしばらくのあいだ行動制限の罰を受けているため、守護団セフィルからの許可が降りないと外出できない。しかしクロウが会話に割って入り、しばらく泊まっていくことを勧める。クロウの家にはクロウの母クレアや弟のクルトもいるので安全だと、シークスもクロウの意見に同意した。しかしなぜかユシカは微妙な反応を見せたため、クロウはユシカが家を離れてひとりで暮らしたいと言ったことに理解を示したり、血が繋がっていなくても家族だから好きに甘えればいいと言うが、鈍い反応を見せるユシカには逆効果だった。

偶然にもクレアが呼びに来たのもあり、ユシカとクロウの会話が中断する。ユシカの部屋の外では夕食の話で盛り上がっていたが、部屋の中にいるユシカは寂しそうに笑って「ひとりでも大丈夫よ」と呟く。だがユシカの傍にいた少女には、ユシカの呟きと同時に軋む音(「強くなりたい」という言葉)が聞こえた。

1-11 新しい家族と新しい名前

記憶喪失の少女は、クロウの一家の食卓に招かれた。目覚めたばかりなので様子見ということで、少女の目の前には一杯の水だけがある。

ユシカはクレアが作ったグラタンを食べながら、クレアと雑談する。クレアの父は孤児院の経営者でクレアは父の手伝いをしていたこともあり、ある日突然家族が増えても対応に慣れていた。記憶喪失の少女を新しい家族として招いて、ちょうどいい機会だと思ったクレアはユシカを敬称なく呼ぶが、ユシカは相変わらずクレアを敬称付きで呼ぶ。

記憶喪失の少女はグラスに入った水を溢してしまう。少女どころかクロウにまで水をかけてしまったが、ユシカとクルトはすぐ動いて水を拭き取ったあと新しい1杯の水を少女に勧める。少女はグラスの持ち方がわからず戸惑っているため、ユシカは持ち方を教えて一口飲み、毒は入っていないことを伝える。水を飲んだ少女はようやく不安が解けてありがとうと言うと、少女のお腹が鳴った。少女の身体は今すぐ食事を取っても問題なさそうなので、少女の分のグラタンも用意することになった。

少女の分のグラタンは、クロウが自ら進んで新しく用意し始める。クロウは出来上がったグラタンを少女の前に置くと、ドリアを貶しつつグラタンについて語りだす。ユシカにとってはドリアもおいしいしクロウのグラタン愛が強くてクロウの気持ちがわからないと話に突っ込んでいると、少女はクロウに『グラリア』を食べていいかどうかを尋ねる。少女はフォークを反対に持って『グラタン』を食べようとしたため、ユシカがフォークの持ち方を教えると、あっという間に完食する。

クロウは少女がグラタンをグラリアと呼んだ理由がわからず、機嫌が悪くなっていた。グラタンとドリアの口論で言葉が混ざって覚えたのではというユシカの指摘のあと、少女はグラリアのおいしさを語りだしたためクロウは怒ってしまう。ユシカに頬を掴まれ怒りを止められたあとクロウは少女に謝るが、そのとき少女の口から自分は記憶喪失だと明かされる。

少女は今になって、ユシカに名前を尋ねられたときの不安が押し寄せ、泣き出してしまう。あのとき少女は何もわからないことが怖くて、言葉が出なかったことを打ち明ける。少女の頭の中が真っ暗だったところ、少女が記憶喪失だというのを見抜いてくれたこと、質問攻めしなかったこと、名前を聞かないまま美味しいものを食べさせてくれたことに感謝していた。

ユシカは少女に、当時のユシカのようになってほしくなかったからだと言った。少女が少女自身のことを話してくれたことに感謝した。

今日の出逢いを大切にしたいと言った少女は、自身の名前を《グラリア》にする。クロウは納得していなさそうだったが、最終的には新しい家族のグラリアを迎え入れた。

グラリアは食事のあと、クレアに連れられ浴室に行く。その間にユシカはグラリアが使った食器を片付けようとしたところ、意識がぐらつく。クロウはユシカを支えるが、ユシカは眠り落ちていた。

ユシカの意識がなくなる前、暗闇の中にいるユシカは右手を見る。右手が動いて安心すると、右手を胸元に置いた。ぎゅっと握り締めた右拳の中には錆びた鍵があるが、ユシカは錆びた鍵に気付かないまま意識を閉じる。